雄国沼湿原のニッコウキスゲ~日光黄菅(ニッコウキスゲ)はどんな花?

花と山野草

6月の下旬になると、雄国沼ではニッコウキスゲの大群落が一斉に花を咲かせます。

この写真は、良く晴れた青空と山の稜線を背に、無数に咲き誇るニッコウキスゲを撮ったものです。

雄国沼は福島県の北塩原村にあるカルデラ湖で、周囲の湿地帯はニッコウキスゲをはじめとした多くの高山植物が群生しており、国の天然記念物として保護されています。

ニッコウキスゲはユリに似た濃い黄色の花を咲かせますが、その花は一日でしぼんでしまいます。

儚くも美しい高原の短い夏を彩るニッコウキスゲのお話に、しばしお付き合いください。

雄国沼とは?

雄国沼(おぐにぬま)は、福島県北塩原村、裏磐梯といわれるエリアに位置するカルデラ湖で、約50万年も前の猫魔ヶ岳の火山活動によってできたとされています。※諸説あります

雄国沼にはニッコウキスゲの他にもレンゲツツジやタテヤマリンドウ、コバイケイソウ、ワタスゲといった高山~亜高山植物が自生し、季節が移り変わるごとに花の見頃を迎えています。

まさに自然の花畑といえる「雄国沼湿原植物群落」は国の天然記念物に指定されています。

ニッコウキスゲはどんな花?

正式名称は「ゼンテイカ」

ニッコウキスゲは正式な品種名ではなく、「ゼンテイカ」というツルボラン科(旧・ススキノキ科)の植物の通称です。

本州中部以北の山地や高原、湿原に自生し、群生します。尾瀬高原や日光の戦場ヶ原湿原、車山高原などの大群落が良く知られ、初夏には山肌を黄色く染めんばかりのキスゲが開花します。

ユリのような花姿は橙がかった濃い黄色で、咲いているのは太陽が出ている日中のみ。日が暮れると花が終わってしまう一日花です。

花弁は6枚に見えますが、うち3枚はガクが変化したもので、花をよく見ると内側と外側に3枚ずつ分かれた形になっているのが特徴です。

ニッコウキスゲの正式名「ゼンテイカ」とは漢字で「禅庭花」と書きますが、戦場ヶ原に一面に咲く様子を中禅寺の庭に見立てたことが由来とされています。

中禅寺から中禅寺湖と戦場ヶ原を見渡した景色が庭とは、なんともスケールの大きいことです。

大群生地を代表する「日光」の地名を冠し、いつしかニッコウキスゲと呼ばれるようになりましたが、日光地方に生えるものだけを固有種としてニッコウキスゲと呼ぶわけではありません。

「キスゲ」は「黄菅」と書きますが、黄色い花を咲かせることと、葉が「笠菅(かさすげ)」に似ていることが由来です(笠菅とはカヤツリグサ科の多年草で、蓑や菅笠などの民具の材料として身近な植物です)。

ユリ科ではなくツルボラン科?

ユリに似ているからユリ科だと筆者も思い込んでいたのですが、実際にユリ科に分類されていた時期もありました。

ユリ科から分かれたススキノキ科とされていましたが、2016年にツルボラン科に名称が変更されています。

分類については非常に複雑で曖昧な部分もありますが、野山に自生しオレンジ色のユリに似た花を咲かせる「ノカンゾウ」は同じツルボラン科の仲間です。

ニッコウキスゲにまつわる逸話

ニッコウキスゲは食用になる!?

実はニッコウキスゲは食べられる植物です。

雄国沼や尾瀬、霧ヶ峰など天然記念物として保護されている群生地では採取できませんが、開花前のつぼみはおひたしや酢味噌和え、天ぷらなどにして食べられます。

生の状態では毒があるため加熱調理が必要です。

また、同じ仲間の「ヤブカンゾウ」「ノカンゾウ」のつぼみは中華食材の「金針菜(きんしんさい)」として知られています。

野山などに自生しているニッコウキスゲを食用として採取するのも楽しいものですが、姿が似ているユリ科植物には毒のあるものが多いので、品種を確実に見分けられない場合は食用を避けましょう。

シカの食害で減少の危機に!

食用になるニッコウキスゲは、それゆえに野生のシカの食料となっています。

尾瀬や霧ヶ峰のシカ食害は深刻で、新芽やつぼみが大量に食べられてしまったことでニッコウキスゲの個体数が減少しています。

柵や電気柵などの対策を講じることでそれなりの成果は出ているようですが、景観としてはせっかくのベストアングルに電気柵が映り込んでしまうのが残念ですよね。

ニッコウキスゲは栽培できる?

ニッコウキスゲは、園芸用として栽培することも可能です。

通販サイトでも苗を購入できるので、興味のある方は育ててみてはいかがでしょうか。

日当たりと風通しが良いところであれば、地植えでも鉢植えでもOKですし、暑さ寒さにも強いので育てやすい花といえるでしょう。

花が終わると種が自然に出来ますが、種から育てるには何年もかかってしまうようです。

ニッコウキスゲの花言葉

ニッコウキスゲ(ゼンテイカ)の花言葉は、一日花であることから「日々あらたに」、また「心安らぐ人」というもう一つの花言葉もあります。

いずれも心にスッと入ってくる素敵な花言葉ですね。

まとめ

高原の夏を彩るニッコウキスゲは、青空と緑に映える濃い黄色のユリに似た花です。

正式な名前は「ゼンテイカ(禅庭花)」で、名所である日光の戦場ヶ原と中禅寺湖を庭に見立てたのが由来です。

ニッコウキスゲの大群落がみられる雄国沼や尾瀬、霧ヶ峰などは国の天然記念物に指定されて保護されていますが、近年ではシカによる食害にも悩まされています。

とはいえ、ニッコウキスゲは広く自生するほか園芸用としても流通しており、食用にもされるポピュラーな植物です。

実は自宅でも手軽に育てられるニッコウキスゲですが、初夏の湿原を覆うように咲く光景はやはり圧巻ですね。

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